しりとーりー

一人でしりとりをして出た言葉を題材に絵を描く。ついでにお話も書く。

<しりとり1-2>寸胴

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悪臭を放つカビまみれのチーズを目の当たりにしたカルピン博士は、放心したようにそのチーズを見つめていました。
偉大なる科学の使徒であるカルピン博士の心は折れてしまったのでしょうか?
もちろん、そうではありません。
彼は多くの難問にもくじけることのない、いたって強靭なる精神力を有していました。
カルピン博士の偉大なる頭脳は問題を解決すべく、全力で回転し続けていたのです。
しばらくチーズを見つめながら、博士はぶつぶつと訳の分からないことを呟き続けました。
「ひらめいた!」
突如カルピン博士は飛び上がりました。
「解決!解決!」
カルピン博士は喜びを我慢できない様子でにこにこしながら叫び、足早でチーズを台所に運びました。
そして所持する唯一の調理器具である寸胴を取り出し、チーズを中に放り込み、火にかけると「カビは熱に弱い」とつぶやき、得意そうに微笑みました。


チーズは熱を加えられるとすぐにとけはじめ、ふさふさとしたカビは分離し、表面に浮き始めました。
鍋からは湯気が上がり強烈な饐えた臭いが立ち上ります。
しかし博士はそのひどい悪臭をまるで気にする様子もなく、
「臭いはともかく滅菌さえできれば、むしろブルーチーズ同様カビによってさらに熟成し、より美味になった可能性も否定できない」
と、カビをすくい取りながら満面の笑みを浮かべました。