しりとーりー

一人でしりとりをして出た言葉を題材に絵を描く。ついでにお話も書く。

<しりとり 1-1>チーズ

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自宅兼研究室で昼寝をしていた偉大なる研究者、カルピン博士は唐突な違和感に目を覚ましました。
「いったいどうしたことだろう?」
普段なら昼寝中には絶対に眼を覚まさないはずなので、本当に奇妙なことだと思いました。
しかし、原因はすぐにわかりました。

博士のお腹が空腹であることを知らせるために大きな音をたてたのです。
カルピン博士は研究に夢中で三日間ほど何も食べていませんでした。
「こんなにひどい空腹はまったくはじめてのことだ」
空腹を意識したせいか、胃の空虚感はますます高まり、博士の強靭な精神力を持ってしてもいよいよ堪え難くなってしまいました。
「とりあえず急いで何か食べなければなるまい」
博士は研究室の床から起き上がり、早速食べ物を探しました。
ところがとても残念なことに食べ物は何も見つかりませんでした。

このところ忙しく、しばらく買い出しにいっていなかったのです。
それでも何かしらあるはずだと、博士は室内をしきりに歩き回りました。
「そうだ!」
突然博士は大きな声を上げました。

以前にもらった、とても立派なチーズを金庫の中にしまっておいたことを思い出したのです。
それはとても立派でおいしそうだったので、すぐに食べるのはもったいないと思い、大事に大事にとっておいたのです。
「救われた!」
そう言って再び大きな声を上げると、すぐにでも金庫からチーズを取り出すことにしました。
「そうだ、これだ」
博士はチーズの箱を取り出だすと、興奮に震える手で箱の蓋を開けました。
「ああ、ああ…」
箱を開けた博士の口から悲しそうな声が響きました。
とても悲しむべきことに、箱の中のチーズはカビていたのです。
チーズは色とりどりのカビに包まれ、吐き気を催すひどく堪え難い悪臭を放っていました。