しりとーりー

一人でしりとりをして出た言葉を題材に絵を描く。ついでにお話も書く。

<しりとり 1-5>占い

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突然のカルピン博士の行動に、窓口の女だけでなく他の銀行員たちも凍り付いたように動きを停止しました。
「聞こえなかったのかね」時間が止まったような室内に博士の声が鋭く響きました。「私はお金を出すよう要求したのだ」
すると部屋の奥に座っていた一人の恰幅のいい紳士が言いました。
「私は支店長です。お待ちください、すぐに準備致します…」
「それではこの財布にお金を入れなさい」博士は財布をポケットから取り出しながら言いました。
支店長はその財布を博士から受け取ると、「ただ今入れてまいります…」と言いながら部屋の奥の扉に消えてゆきました。
拳銃を突きつけられた女も、まわりの行員も身じろぎせずに支店長の帰りを待っています。
ところがどうしたことか、支店長は奥へ入ったきりなかなか戻ってきません。
「遅い。まさか逃げたんじゃないだろうな」
空腹の博士はいらいらした声を上げました。そして、奥のほうに座っている銀行員に声をかけました。
「君、ちょっと申し訳ないが、支店長を呼びにいってもらえないかね」
声をかけられた男は慌てた様子で小走りで奥へ入って行くと、支店長を伴って戻ってきました。
「遅い!本当に遅い。私は空腹なのだ。そしてそれは限界に近い!」
カルピン博士はぶりぷりと怒って言いました。
支店長はひどく恐縮して肩をすくませました。
「大変申し訳ございません。ただいま迅速にご用意致しております次第でございます」
「なぜ財布に金を入れるだけの簡単作業に、どうしてこれほどの時間がかかるのだ?まったくもって理解しがたい!」
怒っている博士の様子に、支店長はよりいっそう肩をすくませました。
「ただいまあなた様の財布にいくら入れるのが適当か占っておりますところでして…」
「なんだと!占い!そんな非科学的な冒涜的方法で?」と博士は非常に驚いて言いました。
「当銀行の決まりでして」と、支店長はますます肩をすくめ、今ではすっかり頭がめり込んだようになってしまいました。
「しかし決まりごとということならば」カルピン博士は持ち前の冷静さを取り戻して言いました。
「待つこともやぶさかではない。私は大変心が広い。占いを続けなさい」
店長は再び小走りで、占いの続きを行なうべく奥へ小走りで奥へ消えて行きました。