しりとーりー

一人でしりとりをして出た言葉を題材に絵を描く。ついでにお話も書く。

<しりとり1-3>うさぎ

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寸胴の中のチーズはすっかり熱が通り、さらには一生懸命カビを取り除いたカルピン博士の努力もあり、柔らかく溶けたそれは、見た目だけは立派なチーズフォンデュのチーズのようになりました。
すっかり気を良くした博士は「これで忌々しいカビは死滅した」と、いささか誇らしげに宣言しました。
その一方でカルピン博士の空腹はさらに進行中であり、今すぐにでもこのチーズを食べたくて仕方がありません。
「しかし、食べる前にまずは安全性の証明を行なう必要がある。ちっちっちっ」
博士は突然舌打ちのような音を口から発し始めました。
「ちっちっちっ」
するとそれを聞きつけたのか、なんと部屋の隅の檻から一羽のウサギが現れ、すこしづつ博士に近づいてきました。
「おいでおいで、さあ、こっちだ。いや、そっちじゃない。ああ、ちがう!こっちだ、ちっちっちっ!そうだ!もう少し近く!おいしいご飯があるぞ。ちっちっち!よし、捕まえたぞ。さあ、こいつを食べるんだ」
カルピン博士は小皿にチーズをとりウサギの前にゆっくりと置きました。
ウサギは目の前のゲル状のそれを食物と認識した様子で、すぐに食べ始めました。

ウサギもまた博士と同じようにひどい空腹だったのです。
そのせいかチーズはたちまちのうちにウサギの胃袋に収まっていきました。
「普通のウサギはチーズは食べない。だが、私が品種改良したこのブタウサギ3号は本当になんでも食べる」
博士はブタウサギ3号の背中を撫でてやりながら満足そうに何度もうなずきました。
「なんでも食べるおかげで飼育もしやすい。いずれウサギ料理の盛んなフランス辺りに売り込みたいものだ」
しかしその妄想による満足そうな表情がみるみるうちに険しいものに変化しました。
チーズを食べたブタウサギ3号は、突然激しく身震いしながら、今まさに食べたチーズを吐いてしまったのです。
「非常に残念な結果だが、ブタウサギ3号でも食べられないとなると、まさしくこのチーズは人間には食べることが難しいことが確認された」
カルピン博士は大いに落胆した様子で、がっくりと肩を落としました。