しりとーりー

一人でしりとりをして出た言葉を題材に絵を描く。ついでにお話も書く。

<しりとり1-7>ぬいぐるみ

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「賢いかはともかく、ニグマトゥリンはとてもかわいいですよ」

オノプコ君は言いました。

するとカルピン博士は対抗心をかき立てられたように言いました。
「かわいいと言うなら、私のスヌープチェリも負けてはいない」
スヌープチェリとは博士の机の上に飾ってある、古びたぬいぐるみでした。
「スヌープチェリって、あの汚いぬいぐるみですか」
オノプコ君はその形状を思い出してみましたが、薄汚れ、古びたそれは彼にとってはかわいいとは思えませんでした。
「汚いとは失礼だな。それに、かわいいかどうかは非論理的な主観の問題に過ぎない。大事にしていれば石ころすらかわいくなってくるものだ」
博士はいささか腹を立てた様子でしたが、オノプコ君は人の気持ちを汲み取る能力が少々乏しかったため気にした様子もありませんでした。
「そうですか。ところで博士、こんな時間に外出なんてめずらしいですね」
「研究所に食べ物が何もなかったので、外食しようと思ってね」
「実のところ僕も空腹だったんです。ご一緒してもいいですか」
「だが、その犬は連れて行けないぞ」
カルピン博士はオノプコ君の連れている犬に目をやりながら言いました。
「大丈夫ですよ」
そう言ってオノプコ君はニグマトゥリンのリードを手放しました。するとニグマトゥリンは元気よく走り出し、すぐに見えなくなってしまいました。
「逃げてしまった」
博士はびっくりして言いました。
「ニグマトゥリンは賢いので、リードをはなすと自動的に家に帰るんです。なにしろ賢いですからね」
オノプコ君は自信満々で言い、博士も渋々と認めました。
「それは確かに実際賢いと認めざるを得ない」

 

 

おまけ>FALLOUT2より<伝説(?)のアルビノデスクロー>

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<しりとり1-6>いぬ

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「大変お待たせ致しました」
支店長はそう言いながらカルピン博士にお金の入った財布を恐る恐る渡しました。
受け取った財布の中を見て博士は不満そうに言いました。
「これっぽっち?」財布の中には紙幣が寂しくも数枚だけ入っていたのです。
支店長は「はい。占いの結果、これが最適と出ましたので」と、とても悲しそうな表情になりました。
博士は「占いの結果なら仕方がない」と言いながら拳銃と財布をポケットにしまうと銀行を出ました。

 

銀行を出ると、すぐに博士のお腹が不満に満ちた大きな音を立てました。
「さて、早速何か食べる必要がある」
博士はそう言いながら周囲をきょろきょろと見回しました。
すると「博士!」という大きな声。
声の方を見ると、博士の研究所のただ一人の助手である、オノプコ君が手を振りながら近づいてきます。
オノプコ君は立派な大きな白い犬を連れとてもにこやかな表情でした。
「やあこんにちは、オノプコ君。犬の散歩かね」と博士。
「はい。天気もとてもいいですから」とオノプコ君。
「研究所に出勤もせずにかね」
「はい。天気がとてもいいですから」
それを聞いた博士は苦々しい表情になりながらもオノプコ君の犬を見つめました。
「しかし、オノプコ君、なかなか立派な犬じゃないか」
「こいつは僕の自慢の犬、ニグマトゥリンです。こいつはなにしろ、とても賢いですよ」
「ほう」カルピン博士は少し興味を持った様子で「どんな風に賢いのかな」と尋ねました。
するとオノプコ君は大きく胸を反らして言いました。
「ボールを投げてやるとボールをとても上手にキャッチしたり、弾いたりするんです」
「そんなことは賢さとは」カルピン博士はそこで一息区切り大きく息を吸い「何の関係もない」とぴしゃりと言いました。

<しりとり 1-5>占い

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突然のカルピン博士の行動に、窓口の女だけでなく他の銀行員たちも凍り付いたように動きを停止しました。
「聞こえなかったのかね」時間が止まったような室内に博士の声が鋭く響きました。「私はお金を出すよう要求したのだ」
すると部屋の奥に座っていた一人の恰幅のいい紳士が言いました。
「私は支店長です。お待ちください、すぐに準備致します…」
「それではこの財布にお金を入れなさい」博士は財布をポケットから取り出しながら言いました。
支店長はその財布を博士から受け取ると、「ただ今入れてまいります…」と言いながら部屋の奥の扉に消えてゆきました。
拳銃を突きつけられた女も、まわりの行員も身じろぎせずに支店長の帰りを待っています。
ところがどうしたことか、支店長は奥へ入ったきりなかなか戻ってきません。
「遅い。まさか逃げたんじゃないだろうな」
空腹の博士はいらいらした声を上げました。そして、奥のほうに座っている銀行員に声をかけました。
「君、ちょっと申し訳ないが、支店長を呼びにいってもらえないかね」
声をかけられた男は慌てた様子で小走りで奥へ入って行くと、支店長を伴って戻ってきました。
「遅い!本当に遅い。私は空腹なのだ。そしてそれは限界に近い!」
カルピン博士はぶりぷりと怒って言いました。
支店長はひどく恐縮して肩をすくませました。
「大変申し訳ございません。ただいま迅速にご用意致しております次第でございます」
「なぜ財布に金を入れるだけの簡単作業に、どうしてこれほどの時間がかかるのだ?まったくもって理解しがたい!」
怒っている博士の様子に、支店長はよりいっそう肩をすくませました。
「ただいまあなた様の財布にいくら入れるのが適当か占っておりますところでして…」
「なんだと!占い!そんな非科学的な冒涜的方法で?」と博士は非常に驚いて言いました。
「当銀行の決まりでして」と、支店長はますます肩をすくめ、今ではすっかり頭がめり込んだようになってしまいました。
「しかし決まりごとということならば」カルピン博士は持ち前の冷静さを取り戻して言いました。
「待つこともやぶさかではない。私は大変心が広い。占いを続けなさい」
店長は再び小走りで、占いの続きを行なうべく奥へ小走りで奥へ消えて行きました。

<しりとり1-4>銀行

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カビたチーズは食用に適さないことを動物実験によって確認したカルピン博士は
「唯一の食物であったチーズがその用をなさない以上、まったく、非常に面倒だが外出するしかない」と苦々しくいいました。
そして、次なる行動である外出の準備をしながら、大変なことを思い出したのです。
「財布の中にお金がない」
なんということ、カルピン博士の立派なワニ革の財布の中には、ほこりの他何一つ入っていませんでした。
これでは外食はおろか、乾いて表面のひび割れた売れ残りの安物ライ麦パン一つ買うことが出来ません。
「曰く、『腹を満たす為にはまず汝が財布を満たせよ』ということか」
そう言って、とても真剣な表情で何度もうなずき、「これは、とても良い格言が出来た」と言うや、上着のポケットから“我が名言集”と書かれた小さな手帳を取り出し、『腹を満たす為にはまず汝が財布を満たせよ』と書き込みました。
「よろしい」手帳をポケットにしまい込みながら言いました。「財布を満たすためには銀行だ」
カルピン博士はすぐさま通りにある小さな銀行に向かったいました。
そして、到着すると、まっすぐに正面のカウンターへ向かいました。
「本日のご用件は?」カウンターの女性が博士に尋ねました。
すると、博士は懐からゆっくりと拳銃を取り出して非常に威厳のある様子で言いました。
「お金を出しなさい」

<しりとり1-3>うさぎ

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寸胴の中のチーズはすっかり熱が通り、さらには一生懸命カビを取り除いたカルピン博士の努力もあり、柔らかく溶けたそれは、見た目だけは立派なチーズフォンデュのチーズのようになりました。
すっかり気を良くした博士は「これで忌々しいカビは死滅した」と、いささか誇らしげに宣言しました。
その一方でカルピン博士の空腹はさらに進行中であり、今すぐにでもこのチーズを食べたくて仕方がありません。
「しかし、食べる前にまずは安全性の証明を行なう必要がある。ちっちっちっ」
博士は突然舌打ちのような音を口から発し始めました。
「ちっちっちっ」
するとそれを聞きつけたのか、なんと部屋の隅の檻から一羽のウサギが現れ、すこしづつ博士に近づいてきました。
「おいでおいで、さあ、こっちだ。いや、そっちじゃない。ああ、ちがう!こっちだ、ちっちっちっ!そうだ!もう少し近く!おいしいご飯があるぞ。ちっちっち!よし、捕まえたぞ。さあ、こいつを食べるんだ」
カルピン博士は小皿にチーズをとりウサギの前にゆっくりと置きました。
ウサギは目の前のゲル状のそれを食物と認識した様子で、すぐに食べ始めました。

ウサギもまた博士と同じようにひどい空腹だったのです。
そのせいかチーズはたちまちのうちにウサギの胃袋に収まっていきました。
「普通のウサギはチーズは食べない。だが、私が品種改良したこのブタウサギ3号は本当になんでも食べる」
博士はブタウサギ3号の背中を撫でてやりながら満足そうに何度もうなずきました。
「なんでも食べるおかげで飼育もしやすい。いずれウサギ料理の盛んなフランス辺りに売り込みたいものだ」
しかしその妄想による満足そうな表情がみるみるうちに険しいものに変化しました。
チーズを食べたブタウサギ3号は、突然激しく身震いしながら、今まさに食べたチーズを吐いてしまったのです。
「非常に残念な結果だが、ブタウサギ3号でも食べられないとなると、まさしくこのチーズは人間には食べることが難しいことが確認された」
カルピン博士は大いに落胆した様子で、がっくりと肩を落としました。

<しりとり1-2>寸胴

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悪臭を放つカビまみれのチーズを目の当たりにしたカルピン博士は、放心したようにそのチーズを見つめていました。
偉大なる科学の使徒であるカルピン博士の心は折れてしまったのでしょうか?
もちろん、そうではありません。
彼は多くの難問にもくじけることのない、いたって強靭なる精神力を有していました。
カルピン博士の偉大なる頭脳は問題を解決すべく、全力で回転し続けていたのです。
しばらくチーズを見つめながら、博士はぶつぶつと訳の分からないことを呟き続けました。
「ひらめいた!」
突如カルピン博士は飛び上がりました。
「解決!解決!」
カルピン博士は喜びを我慢できない様子でにこにこしながら叫び、足早でチーズを台所に運びました。
そして所持する唯一の調理器具である寸胴を取り出し、チーズを中に放り込み、火にかけると「カビは熱に弱い」とつぶやき、得意そうに微笑みました。


チーズは熱を加えられるとすぐにとけはじめ、ふさふさとしたカビは分離し、表面に浮き始めました。
鍋からは湯気が上がり強烈な饐えた臭いが立ち上ります。
しかし博士はそのひどい悪臭をまるで気にする様子もなく、
「臭いはともかく滅菌さえできれば、むしろブルーチーズ同様カビによってさらに熟成し、より美味になった可能性も否定できない」
と、カビをすくい取りながら満面の笑みを浮かべました。

<しりとり 1-1>チーズ

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自宅兼研究室で昼寝をしていた偉大なる研究者、カルピン博士は唐突な違和感に目を覚ましました。
「いったいどうしたことだろう?」
普段なら昼寝中には絶対に眼を覚まさないはずなので、本当に奇妙なことだと思いました。
しかし、原因はすぐにわかりました。

博士のお腹が空腹であることを知らせるために大きな音をたてたのです。
カルピン博士は研究に夢中で三日間ほど何も食べていませんでした。
「こんなにひどい空腹はまったくはじめてのことだ」
空腹を意識したせいか、胃の空虚感はますます高まり、博士の強靭な精神力を持ってしてもいよいよ堪え難くなってしまいました。
「とりあえず急いで何か食べなければなるまい」
博士は研究室の床から起き上がり、早速食べ物を探しました。
ところがとても残念なことに食べ物は何も見つかりませんでした。

このところ忙しく、しばらく買い出しにいっていなかったのです。
それでも何かしらあるはずだと、博士は室内をしきりに歩き回りました。
「そうだ!」
突然博士は大きな声を上げました。

以前にもらった、とても立派なチーズを金庫の中にしまっておいたことを思い出したのです。
それはとても立派でおいしそうだったので、すぐに食べるのはもったいないと思い、大事に大事にとっておいたのです。
「救われた!」
そう言って再び大きな声を上げると、すぐにでも金庫からチーズを取り出すことにしました。
「そうだ、これだ」
博士はチーズの箱を取り出だすと、興奮に震える手で箱の蓋を開けました。
「ああ、ああ…」
箱を開けた博士の口から悲しそうな声が響きました。
とても悲しむべきことに、箱の中のチーズはカビていたのです。
チーズは色とりどりのカビに包まれ、吐き気を催すひどく堪え難い悪臭を放っていました。